高校生になって時間にゆとりが出来てきた頃になると、バイトをしてお金を稼ぎたいと思う人は多いです。そしてバイトに慣れてくるとバイト先の上司から残業を頼まれる場合もあるでしょう。
別に残業が嫌じゃなかったらしてもいいとは思いますが、楽しくない職場などでバイトをしている状況では、残業をしてまでバイトをしたくない!と思っている人もたくさんいます。
もちろん人によっては「もっと稼ぎたい」という主体的な考えから積極的に残業をしたいと思う人もいるでしょう。しかし、そもそも高校生がバイトで残業をする行為は法律によって認められているのでしょうか?
高校生が残業をすると違法という声など良く聞きますが、実際は残業をしても良い場合もあるのです。そこで今回は高校生バイトの残業について詳しく解説していきます。
高校生の法定労働時間は?
まず最初に法定労働時間について知っておきましょう。法定労働時間とは、労働基準法によって決められている勤務時間のことを言います。18歳以上、つまり成人の方は1日8時間までの労働、1週間で40時間以内と決められています。
1日8時間、週40時間というのは18歳未満の方も同じ条件となっているので、高校生でも法定労働時間は成人の方と同じということになります。
高校生がバイトで残業をすると問題がある?
では残業と聞くと労働時間が長くなるので、高校生は残業が出来るのでしょうか?一般的に残業というのは「1日8時間を超える労働」のことを指しています。法定労働時間以外の労働時間が残業という意味になっています。
長時間労働になるので高校生は残業が出来ない、と思われがちですが、結論を申し上げますと「残業の内容」で変わってきますので、残業をしても良い場合としてはいけないケースの2つに分かれますが、実は一般の方も残業出来ないケースもあるのです。
残業は36協定を締結するのが必須
労働基準法では1日8時間までの労働となっているので、実は誰でも基本的に残業は出来ないのです。しかし法定労働時間以外の労働を従業員にさせたい場合、36協定を締結し労働基準監督署に届出することで、時間外労働をしても良いことになっています。
よって、この36協定の届出をしていないと、使用者(事業主)は従業員に残業をさせることが出来ません。なのでこの36協定を提出して、ようやく残業を従業員にさせることが出来る訳ですが、実は18歳未満の高校生はこの36協定が適用されません。
つまり、18歳未満の方は「残業ができない」ことになっているのです。
しかし、成人の高校生は適用される
高校生の年齢は15歳~18歳までの方がほとんどだと思いますが、労働基準法では対象が「年齢」で分けられているので、18歳の成人の高校生は法律上、36協定が適用されることになります。
よって、成人になった18歳の高校生は残業をしても良いですし、深夜の時間帯も関係なくバイトをすることが可能です。しかし現実は「成人」の扱いがされていません。
高校生で成人となっても、企業側からすれば「高校生バイト」というくくりで見ているので、15歳~17歳と同じような扱いをしている企業が多いです。なので、高校生は残業や深夜バイトなどが出来ないケースが多いです。
ちなみに、労働基準法では高校生(18歳未満)は深夜の時間帯は働くことが出来ない、ということになっています。深夜の時間帯というのは、22時~5時の時間となりますが、この時間帯は年少者(18歳未満の高校生)が働くことはできません。
※年少者というのは18歳未満の方、2022年4月より18歳は成人
では、18歳になっていない高校生が残業をすることは違法?と思われるかもしれませんが、上述した通り「残業の内容」によって違法かどうかは変わってきます。
18歳未満の高校生が残業をしても良いケースとは?
1日8時間を超えない残業
1日に8時間をオーバーしない労働の場合は残業が可能です。例えばAさんはコンビニでバイトをしていて、週に5日16時~19時まで勤務していたとします。
このAさんに店長から人手不足なので、1時間残業をお願いされた。よって、バイトをする時間は16時~20時までになった。このようなケースの残業は問題ありませんので、違法とはなりません。
簡単に説明しますと、1日8時間以内の労働だったら、何時間でも残業をしても良いことになります。但し、1日8時間を超えると場合によっては違法となる場合があります。
週に40時間以内の変則パターン
例外規定として、1日8時間以上も働くことができる規定が実はあります。高校生でも適用されるのですが、変則的な勤務として1日10時間までの労働をすることも可能です。(参考文献:労働基準法60条の3項の1)
週に40時間という労働時間は守らないといけないのですが、週に1回どの曜日でも構わないので1日を休日にし、その他の曜日で1日4時間以下の労働時間を設けることで、10時間働くことが可能な日を作っても良いこととなっています。
残業が出来るシフト例
火:6時間労働
水:5時間労働
木:5時間労働
金:休み
土:10時間労働
日:10時間労働
火:8時間労働
水:8時間労働
木:休み
金:休み
土:10時間労働
日:10時間労働
違法なシフト例
火:8時間労働
水:8時間労働
木:休み
金:休み
土:10時間労働
日:10時間労働
単純ですが上の場合は週の合計が44時間労働となるので違法となります。基本的に高校生は1週間40時間以内、というルールがあると思っておくといいでしょう。
その他、あまり覚える必要はありませんが、変形労働時間制という月単位などで労働スケジュールを組む場合は、1週間を48時間以内にすることも可能となっております。よって1週間48時間働いたとしても、この場合は違法となりません。
ただ、高校生が変形労働時間制のバイトをする人はまずいないレベルだと思いますので、気にしない方がいいでしょう。
高校生でも残業手当が付くので知っておこう
上述の通り、高校生でも残業出来ることが分かりましたが、残業をすると「残業手当」という手当が付くようになっています。残業手当は時給の25%増しとなっています。
例えば10時間勤務をした場合、8時間は通常の時給で構わないのですが、8時間を超える残り2時間は「残業手当」が付く時間となります。ですので、もし時給1000円のアルバイトをしているのであれば、
- 8時間(1000×8)=8000円
- 2時間(1250×2)=2500円
合計で10500円の報酬を貰う権利があるのです。もしこの例の場合、残業した2時間が通常の時給の1000円で計算されて、給料に残業手当がついていない、というのは明らかに違法です。
もし残業代が出ているかどうか調べる場合は、給料明細などを調べるのが手っ取り早いので、気になる方は調べてみてください。
掛け持ちをしている場合、残業代の支払いは?
残業の時間というのは1つのバイト先で決まるのではなく、トータルの労働時間で決まります。つまり、バイトを掛け持ちし2つのバイト先でトータル1日10時間働いたのであれば、残業手当が付くのです。
では残業手当はどちらのバイト先が支払わないといけないのか?と疑問に思うでしょう。この場合、後で雇用契約を結んだ会社が負担することになっているケースが多くなっています。
例えば、メインとしてバイトしているA社で7時間バイトをした。その日のうちに副業のバイト先であるB社で3時間バイトをした。A社の方が雇用契約を先にしていた。
このようなケースだと、残業代はB社が負担することになります。但し100%B社が負担しないといけない、ということではありませんので、結構この辺りは曖昧となっていますので、最終的にはバイト先に相談をすることになります。
上述のような理由によりダブルワーク不可のバイトも多い
企業側からすれば余程の人手不足やスキルがある人間でない限り、リスクを背負って掛け持ちバイトによる残業手当を支払いする、というのは避けたい所でしょう。
残業代を払わないとなれば「未払い」となるので罰則によって罰金や懲役などのリスクがあるのです。残業手当を払うぐらいだったら、他のバイトを雇った方がマシ…と考えているオーナーもたくさんいます。
ですので、バイトの募集要項で「掛け持ち禁止」との記載がある場合、このような意味も含まれているでしょう。また、一般的な残業時間の上限は月45時間・年360時間となっています。これを超過する場合は違法な残業となるので気を付けましょう。
但し、個人事業主の場合は話がまた変わってきます。
個人事業主になると残業は無制限で可能
個人事業主、所謂自営業ですが個人事業主として働いている方は、何時間働いても問題はありません。理由として、個人事業主は労働基準法が適用されないからです。労働基準法というのは、働く人のルールなので、個人で仕事をする人は関係がないのです。
つまり個人事業主は「マイルール」が適用されると思っておくと分かりやすいです。労働時間は自由、休憩時間も自由なので自分自身で決める必要があります。なので、実は個人事業主になれば、高校生でも残業を好きなだけすることが一応できる、という理屈です。
よって、web制作などの知識を学び、18歳未満の高校生が自宅で個人事業主として働くのであれば、深夜でも働くことが出来ますし、何時間でも働くことができるという解釈になります。
参考文献:15歳の藤井棋士が「深夜労働OK」なワケ
まとめ
高校生がバイトで残業をすることは基本的にはNGとなっていますが、例外のパターンもあるので一概に残業はできない、ということではありません。残業が認められているケースもあるので、違法な残業をするのではなく合法的に残業をして稼ぎたいですね。
また、残業をすると残業手当が付くようになるので、普段の時給よりも時間給がアップします。普通は給料明細に残業手当(時間外手当)という欄があると思いますので、そこで確認できるので残業をした場合はチェックをしておくといいでしょう。